「ちゅうか、暑いなぁ。お前の部屋はなんでクーラーないんよ」



ぶつぶつ文句をたれながら、陣は風通しのいい窓ぎわに移動する。


そんなに暑いなら自分の部屋で過ごせばいいのに。

と思いつつ、あたしも窓ぎわに移動。



出窓のふちに、ふたり並んで腰かけて。


窓の外にぶらんと出した4本の足を、太陽がジリジリ焼いていく。



「まぶし……」



眼下に広がる海は、夏の日差しを跳ね返して発光しているみたい。



磯のにおい。

おしゃれなビーチとはまるで違う、田舎の漁師町のにおい。



「恋、してみたいなぁー…」



炭酸の抜けたぬるいコーラを陣と回し飲みしながら、つぶやいたそのとき。


2人乗りの原付バイクが3台、家の前の道を通り過ぎていった。



「あぁっ!」



突然叫んだあたしに、陣が怪訝そうな顔をする。



「何なよ?」