【短】夏秘め natsu-hime


「あ……ありがとう」



ナマコの恐怖からは逃げられた……けど。


この体勢。


拓ちゃんと向き合って、体を支えられているこの体勢が、やばい。



拓ちゃんのちょっとタレ気味な目。


拓ちゃんの腕のたくましさ。


拓ちゃんの髪をつたう水滴。



こんなの、会って2回目の距離じゃないよ。



「紗里ちゃん」



海水で濡れた拓ちゃんの唇が、ゆっくり動いた。



「俺、会ったばっかりやけど
紗里ちゃんのこと、ええなって思ってるで」



「……っ」



あたしも。


てゆうか、もう

すでに……。




「一応聞いとくけど、紗里ちゃんって中学生やんな?

何年?」



「……」




頭のてっぺんを太陽が照りつける。


思考回路、全部シャットアウトされそうなこの熱さ。



波を受ける体が

ぐらぐらと揺れる。


揺れる。



揺れる……





「……中、学…

……3年生」





「りょーかい」






拓ちゃんの腕の中に

あたしはそっと引き寄せられ




そして、波の合間に

ファーストキスを奪われた。