【短】夏秘め natsu-hime



「紗里ちゃん。どうせ濡れたんやし、海入ろか」


「え?」



あたしが返事をするより先に、拓ちゃんはそのまま海に飛び込んだ。



「おーっ、気持ちいい!
紗里ちゃんも、早く!」


「でも」


このあたり、たぶん深いし……。


「大丈夫。足着くから」


「ほ、ほんまに?」


「うん」



不安だけど、もっと拓ちゃんに近づきたくて。


思いきってあたしもダイブした。



ドブンっ、と鈍い音が耳のそばで響き、口の中がしょっぱくなる。



と、次の瞬間。


足の裏に、ぐにゃっと嫌な感触が伝わった。



「うわぁっ!! 下、何かいる!」


「あ、ナマコやわ」


「ナマコ!?」



パニックになったあたしが、海面をバシャバシャ叩いていると、


「しゃあないなー」


拓ちゃんがあたしの腰のあたりをつかんだ。



ふっと体が浮き上がり、足の裏から嫌な感触がなくなった。