【短】夏秘め natsu-hime


もう~っ、ビックリした。

顔から火を吹くかと思った。


……でも。



――『紗里ちゃんにはまだ、ちょっと刺激が強かったな』



拓ちゃん……。

あたしのこと、何歳やと思ってるんやろう。


中1って知ったら、やっぱり引くよね?



「あの、拓ちゃん」

「ん?」


「なんで今日、会いに来てくれたん?」



拓ちゃんは缶ジュースの空き缶にタバコを捨て、あたしの顔をのぞきこんできた。



「もっと話してみたいな~って思ったから」



それは……あたしに興味持ってくれたってこと?



言葉に詰まって、拓ちゃんの瞳を見つめ返したそのとき。


大きな波が岩に当って砕け、あたしの腕に水しぶきがかかった。



「冷たっ」


「あ~あ、濡れてもたな」


「あ……」



海水がかかった場所を、拓ちゃんに触られた瞬間、電流が走った。



大っきい手。


いつも陣が「巨大女」ってバカにするあたしの手より

ずっとずっと大っきい

“オトナの男の人”の手。