【短】夏秘め natsu-hime


「じゃあ、た…拓ちゃん、って呼んでもいい?」


「ええよ」



やった!


あたしは彼――拓ちゃんの方に、いそいそと体を向けた。



「ねぇねぇ。こないだ拓ちゃん、病院跡に行ってきたんやんなぁ」


「おー、あの心霊スポットな」


「どうやった? 何か見た?」


「……うん。どえらい怖いもん、見てもた」


「うそっ! 何?」



あたしが興味津々でたずねると、拓ちゃんは

「大きな声では言えやんわ」

と、あたしの耳に唇を近づけてきた。



距離、近っ……。



「な、何を見たん?」



ドキドキして答えを待っていると。



「あのなぁ、……大量の使用済みコンドーム」


「……」



コ、ココ、コココ……っ!

とニワトリみたいな声を出して、顔を赤くするあたしに、



「あははっ、ごめん。
紗里ちゃんにはまだ、ちょっと刺激が強かったな」



優しい笑顔で、頭をなでなでしてくれる拓ちゃん。