「アイス。ちょーだい」


「あ……」



お…っ、
大倉さんやぁ……!!



バニラアイスを2つ持って、あたしの目の前で微笑んでいるのは、待ちに待った彼だった。



「は、はい! 220円です! 
あっ!やっぱタダでいいです!」


「そういうわけにいかんよ」



220円をトレーに置いて、アイスをひとつ、あたしに手渡してくれる大倉さん。



「え、あの、これ……?」


「差し入れ」


と、ニッコリ。


今日もやっぱり、彼の笑顔は豪速球だ。



あぁ……ホンマに来てくれるなんて。


夢見心地でアイスを食べていると、大倉さんは店内をキョロキョロ見回した。



「今日はあの子、いてへんのやな」


「あの子? ……あー、こないだ一緒に店番してたアホのことですか?」



アホって。と大倉さんは笑って、それから言った。



「俺、たぶんあの子に嫌われたっぽいわ」