――『まぁどうせ、
あいつの言うてた
“また来る”も
社交辞令に決ってるけどな』
ムカつく。
ムカつく。陣め!
そりゃあ多少は社交辞令もあったかもしれんけど。
可能性がゼロと決まったわけじゃないやんか。
あたしは、この夏休みにかける。
絶対に恋をつかみとってやる!
……って。
最初は意気込んでたんやけど。
「ひ~ま~……」
店番を始めて早5日。
待てど暮らせど彼は現れず、あたしはムダに退屈な時間を過ごしてる。
「紗里―。店番サボってへんやろなー?」
「ちゃんとやってるわぁー!」
2階からお母さんに注意されて、イライラしながら叫び返した。
あ~あ。
レジにおでこを乗っけて、ため息をつくあたし。
やっぱり、そんなにうまく行くはずないか。
このまま今年の夏が終わるんかなぁ……
「ひゃっ!!」
いきなり首筋に冷たい感触が走って、あたしは飛び上がった。