満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑

…しくじった。

誠は心の中でつぶやいていた。この場所で魔法を使ったことにではない。

この部屋が無人だと思い込んで魔法を使ったことがミスの原因だった。

千草は忘れ物を取りに行くふりをして、ただ、ドアを閉めただけだった。その様子は無響室の中にいる誠からは見ることができない。

そして、すぐに何らかの方法で電気を落とす。これは、暗闇にして千草の姿を隠すため、それと誠に魔法を使わせるため。

これで誠の頭の中には、無人の空間が出来上がる。

誠は頭の中を整理しながら、心を平常心に整えた。

「なんで？こんなことを？」

これが誠が導き出した。第一声である。

発するのは言い訳やごまかしではなく、問い。

情報を手に入れる。それが大事だと誠は考えた。

何も知らないままで話を進めるのは危険だ。

相手が自分の何を知っていて、何を知らないのか。それを知らなければ言わなくてもいい情報も漏らしてしまう。