満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑

灯した炎により室内を照らす。

誠は足元を凝視するが落とし物は見つからない。

そもそも何を落としたのかもわからない。

それを確かめるため立ち上がろうとした時。

ドアの方で人影が揺れる。

「探し物は見つかった?黒岡君?」

一切の笑顔を消した千草がそこに立っていた。

「千草…さん…。」

誠の手のひらには灯された炎。
千草の様子からしてずっと見ていたのだろう。

誠の背筋に冷たい汗が流れた。
ゆっくり、ゆっくりと。

つかの間の沈黙がひどく息苦しく感じられる。

千草はゆっくりと無響室に入り戸を閉めた。

ドアが閉まると室内の音は一切響かなくなる。

つまり、この部屋の音は世界から切り離された。