誠もそれを聞き取り音にしていく。

…………………。

ズズ。ズズ。

綾香の読み上げる言葉を復唱している誠に何が動いている感触が伝わる。

……なんだ?

誠が違和感を感じ始めた時、綾香の声が止まった。

「大丈夫みたいね。」

綾香はそう言い、羊皮紙を指差した。

誠には未だ何が動いている感覚が続いている。

そして、その感覚が羊皮紙に押し付けてある親指から伝わって来ていることも理解出来た。

…出来れば見たくは無いけど、綾香ネェも終わったって言ってるし。

誠はその目を羊皮紙に向けた。

羊皮紙にはさっき見た綾香が契約書と言った羊皮紙と同じ様な模様、文字が出来つつあった。

中央の誠の親指から赤黒い線が伸び、それらを書き綴っている。

そして、端の方では未だ血がうごめき文字を形成している最中である。

「誠、指離しちゃだめよ。もう少しだから。」

…………なんだコレ…?




それから数十秒で契約書は完成した。