ピーンポーン。

夕方、誠は一軒の家の前に立っていた。

建ててから十数年というところだろうか、新しくも古くもない感じのごくごく普通の家である。

誠の鳴らしたインターホンに反応して家の中からトタトタという足音が聞こえる。

ガチャ。

静かにドアが開く。

と同時にドアの向こうからから黒い影か飛び出し、誠の胸に飛込んできた。

「また、お前か…。」

誠は自分の胸に飛込んできた黒猫を抱きとめ、喉をゴロゴロと撫でた。

猫は気持よさそうに誠に頭を擦りつけている。

この猫は昨日の猫とみて間違いないだろう。

「いらっしゃい。誠。どうしたの?」

開いたドアの向こう、そこに誠は視線を移した。

綺麗な黒髪は後ろでまとめられ、Tシャツとジャージというモロ部屋着からは白く美しい手足が伸びている。

その美しい腕には真新しいヒッカキ傷がある。

……眼鏡が無いくらいかな?大きな違いは…。

誠は声の主に向かい軽く笑顔を作った。

「久しぶり、綾香(あやか)ネェ」

「そろそろくるんじゃないかなって思ってたよ。」

綾香は笑顔で誠を招き入れた。