コツコツ。と辺りには誠の足音のみが響いていた。

ガチャーん。

辺りで小さいがガラスの割れる音がする。

誠は辺りを見回したが普段と何も変わらない。

音がした方にはペットショップがある。動物があばれてでもいるんだろう。誠はそう思っていた。

誠が歩を進めようとした時、ペットショップの脇の少しの隙間から小さな影が飛び出した。

影は明るい月光に照らされてもなお黒く、姿が判別出来ない。

誠が不思議そうに影の動きを目で追って行くと影は誠の方に走り出した。

小さな躰、四本の足で柔らかく走る様。

少しして誠はソレが猫であることを認識した。

月光に照らされてもなお黒い影は毛なみのいい黒猫である。

誠がソレが猫であると認識した直後、猫はビョッと飛び誠の胸に飛込んできた。

「っっと。」

誠はとっさに黒猫を抱きとめた。

そして黒猫は誠の腕の中でもと来た方をキッカリと睨みつけている。

コツン、コツン。

月光に照らされることのない暗闇からヒールの様な足音が響く。