しなやかな腕の祈り

動揺してしまっている。

絶対にないことを、あたしは考えている。

助けてくれたのは、お父さんかも知れないなんて…馬鹿げた事を考えているあたしがここにいる。



「ご…ごめん隆弘、今日叔父さんたち夜中まで帰ってこない日で…あたし留守頼まれとったんや、帰るわ」



もう自分が何を喋っているのかサッパリ分からない。

それからは一つ一つの光景がチャプターされた携帯動画の様に駒送りになって見えた。

とりあえず隆弘は笑顔で手を振って帰っていって、あたしは震える手で何とか運転して帰ってきた。

嘘をついたつもりだったのに、家には本当に誰もいなくて台所のテーブルに夕飯があたしの分だけ置かれてあった。

電子レンジにかけて、料理が温まるまでのほんの数分も全て駒送りの様だった。

隆弘が余計なことさえ言わなけりゃ、なんて…とても勝手な意識にも支配されそうになる。



『もしもし』



叔父さんはいつも通りの落ち着いた声で電話に出た。



「叔父さん??どこにおんの??」



叔父さんに電話したのには理由があった。

一つは本当にどこに行ったのか疑問だった。

もう一つは…今まで躊躇して実行しなかった計画を実行するために、叔父さんたちの行動を把握しておくためだった。