しなやかな腕の祈り

隆弘は現場にいたらしい。



「俺の連れなんで、俺が連れて帰りますって、その人捕まえて言ったんやけど。
"俺はこの子の身内"って言われて断られたんだなぁ。
お前、完璧に意識飛んでるし、ビックリしたさぁ…
その後お前をフクロにした奴見つけて、もう一回俺、シメたから」



身内…???

頭が痛くなってきた。

叔父さんじゃない、身内。

成人した、男の身内なんて、あたしにはいない。

静香叔母さんの兄は確かに身内で成人男性だけど、酒も煙草も知らない超真面目人間だからヤクザに間違われることもないし…まず愛宕町にいるわけがない。

じゃあ、誰…???

気が遠くなりそうな出来事や、あたしの頭を悩ませる要素が最近たくさんありすぎる。

そういう時期なんだと思うけど、今までのとは今回は桁外れすぎて…もぅ、ややこしい。



「そうかぁ、多分叔父さんかな」



隆弘に複雑な心境を悟られたくなくて、あたしはとっさに嘘をついた。

あたしの頭の中に、"お父さん"と言う四文字がよぎった。

違う、違う。

絶対にそれはない。

お父さんの訳がない。



「顔色悪いぞ、大丈夫かぁ??」



さっきまで"会いたかった"の一言で熱くなっていた顔は、今は氷のように凍てついていて、手も足もキンキンに冷たくなっていた。