しなやかな腕の祈り

「…で、何か用事??」



わざと素っ気ない問い掛けをしてみると、煙草の煙を吐き出しながら『別に、会いたかっただけ』と言った。



「あっ、会いたかったからって、わざわざ元カレもいる場所まで来なくても良くない!?馬鹿でしょ、あんた」



"会いたかった"なんて言われて、顔が熱くなっていくのが自分でも分かる。



「そういえば…怪我、だいぶ良くなったな」



隆弘の突然放ったその言葉に、熱くなっていた顔が急激に温度を下げていくのが分かった。

隆弘は知らないはずだ。

叔母さんだって、そう易々とあたしが男にボコボコにされたなんて…初対面の隆弘に話したりするわけない。

何で知ってる…???

隆弘の言い方じゃ、怪我が一番酷かった時をも知っているような…そんな言い方だった。



「怪我したこと、何で知ってんの」



冷静な声で問う。



「お前とあの日別れてから、一回は帰ろうと思ったんやけど。
友達から電話で愛宕まで出てこいって言われて行ったわけ。
そしたら表参道で凄い人だかり出来てて、誰か知らん男の人…ヤクザっぽい人が怪我して血まみれの男の人が、お前抱えて人だかりから飛び出してきた所見たからさ。」