しなやかな腕の祈り

「どんな人たちやったんやろうね。
あたしらの父親って…」



父親の声も何も知らないあたしたちを
誰が巡り会わせたんだろう。

ただの仕事仲間のままだったら
何の気も使わなくて済んだのに
隆弘の今日の暴露話を聞いて
あたしは隆弘を今までの隆弘としては
確実に見られなくなってしまった。
年が下だったからとかじゃなくて
何を思って隆弘は今まであたしに
近付いて仲良くなっていたのか。



「ゴメン隆弘、あたし歩いて帰る」



あたしは立ち上がった。
もう今日は変な夢も見てしまって
ただでさえ不思議な気分なのに
これ以上何か考えたくなかった。



「送ってくって」

「いいよ、捕まりたくないし」



冗談っぽく言い返して
送っていくという隆弘の心遣いを
あたしはやんわり断った。



「また、電話するからさ」



手を振って、あたしは歩き出した。
まだ酒は残っていて
フラフラする足元を一歩一歩確認しながら
冬空の下を歩いた。



「練習…始まらないかな」



正月の繁華街は込み合っていて
至る所で、あたしみたいな酔っ払いが
大声で笑ったり喧嘩してみたり
それぞれの時間を過ごしている。
本当は、繁華街の中は歩きたくない。
でも家まではこの繁華街を抜けるのが
一番の近道だから仕方ない。