「……戦時中、吉本興業が軍部に対し、色々と協力していた事は知っているかね?」

「……まぁ……少しなら。」

パンフか何かで見たような気がする。中国に芸人を送ったり、映画を作っていたりしていたらしい。

「その一環として、この船は造られたのだよ。」

「……いや、せやけど、何で…?」

一企業である吉本が、戦艦なぞ造らにゃならんかったのだろうか。

怪訝な表情の俺を見て、オッサンは不敵な笑みをもらした。

「…………僕の、夢でね。」

………オッサンの趣味かい!

「兵器とは、当然、人殺しの道具だ。…………私も、吉本に入る前はその開発に携わっていてね。」

オッサンの横顔に、寂しそうな影が落ちる。…………そんな顔する前に、その貧乏ゆすりを何とかせい。

「科学とは、本来、人々の幸福の為にあるべきなんだ。………だから私は、自身の持てる力を振り絞り、この『大阪』を造った。」

その指が、愛おしそうに指揮卓の表面を撫でる。

「………この戦艦はね、『笑いの力』をその動力源として、また兵器として使用する。吉本、そしてここ大阪でしか成し得ない技術なんだよ。」

「………わ、『笑いの力』………?」

オッサンは、にわかには信じられないような事を喋り続けている………。




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