繭(まゆ)

家の前に横付けにされたタクシーに乗せられ、私は隣県へと運ばれていく。

勝手知ったる、私のふるさと──

あのアパートへ近づく度に、小さな胸は踊る。



三年前、淳一が初めて挨拶に来た時には引け目を感じた小さな家も、

結婚してからはただ、懐かしくて、毎日帰りたいと窓の外を眺めていた。


自分が憧れたはずの「よい暮らし」は、いつのまにか少しずつ少しずつ、心を曇り色に浸していたんだ。