「繭ちゃん、お待たせ」 義母はいつの間にか、あの香水をつけなくなった。 中指で存在を主張していた金の縁取りしたルビーの指輪も、ここ数ヵ月は桐タンスの中だ。 私は、溺愛されていた。 朝から晩まで、殆んどの時間を彼女と過ごしていたのだ。 聞き分けのいい、可愛い孫。 母親のいない、可哀想な孫。 そんな義母も1ヶ月に1度くらいは、私の実家に孫を預けて息抜きをする。 その時間は、こちらにとってもリフレッシュする大切なものだった。