アゼリア遺跡。

とにかく、人はこの場所を指してそう呼んでいた。

白い石を削り出して積み上げた四角い柱が正方形に配置され、その中央にあたる位置には、黒い石でできた複雑な紋様の描かれた石板が埋め込まれている。

だがなにしろ風化が激しく、その苔むした石板に書かれている文字らしきものの内容は読み取れなかった。

四方の柱にも、幾筋ものひびが走っている。

そんなわけで、この遺跡そのものに目を向ける者はほとんどいなかった。

古代の神殿だとも言われるが、そこで行われたであろう儀式もとうに廃れ、憶測の域を出ることはない。