「だめだよ、ルーチェ。もう進めないよ」

胸中安堵の息を吐きながらも、キルトはなるべく残念そうに聞こえるように、幼馴染みの少女に、そう告げた。

洞窟の奥は完全に行き止まりになっている。

「やっぱりただの伝説だったんだよ、神界の扉だなんて――」

ぶつくさと言いながら、洞窟の奥を塞いでいる岩盤に、トンと手をつき――

「うわぁっ」

ガクンッと落下の衝撃。

続いて、空中に放り出される身体。

視界の先に一瞬とらえたのは、谷底を流れる川――。

「嘘だああっ!」

叫び声が尾を引いて木霊する――。