それから数秒沈黙が流れた。そのたった数秒が、とてつもなく長く感じた。
「…私のことはいいから、早く問題解いて。」
そう彼に言い、私は坂上くんと向かい合わせにした席に座る。
「…教えろよ。」
「どこ?」
「英語じゃなくて、相手。」
真っ直ぐ私を見るその瞳。胸が締め付けられる。
そんな瞳で見ないで。
「なんで?」
平常心、平常心。
「…好きだから。先生のこと」
そう私の目を捕らえる鋭い視線。
「冗談やめて。…大人をからかうなんてナンセンスよ。」
「冗談じゃねえよ?」
「…ほら、手止まってる。」
坂上くんは、私のペースを崩す。いつもいつも。
「…そうよ。」
「え?」
「電話の相手、男の人だよ。…答えたんだから早くやって。」
可愛いげない。そんなの分かってる。でも、今私の目の前にいる坂上くんは、好きになってはダメな人。
生徒なんだから。
距離を保たなきゃいけない。だから、そのためなら私はいくらでも可愛くない女になる。


