『あなたのお客様は、まだ体験から戻って来ないのかしら?
色々と意見を聞いて、今後の参考にしたいのよね。』
そうだった。
社長には体験モニターが俺の客から、客ではない優季に代わったことをまだ伝えていなかった。
「社長、実は…」
コンコン!
言いかけてノックに阻まれた。
『失礼致します。野島様をお連れしました。どうぞ、こちらへ…』
スタッフは優季に応接室に入るよう促すと、仕事に戻って行った。
体験エステでリラックスできたのか、スッキリとした顔をしていた優季だったけれど、
俺と向かい合わせに座っていた宮園社長を見ると、驚いたのか、目を大きく見開いて、
『……お母さん。』
ポツリと呟くと、その場に立ち尽くした。

