血管に針を刺すと、 「手を楽にしてくださいね。」 駆血帯を外し、針をテープで固定すると、点滴を落とすペースを調節した。 「気分悪くなったら言ってくださいね。」 桜庭さんは小さく頷くと、 『ありがとう。 腕を上げたな、優季。 ドクターだって俺の血管に一発で刺せる奴は少ないからね。』 そう言うと、疲れたのか目を閉じた。 腕を上げた、って… 私、あなたに会ったのも、点滴したのも、 今夜が初めてなんですけど… 桜庭さんの言動には、首を傾げたくなることが多すぎる。