ふたりの表情には『怖ぇよ優季…』という言葉が読み取れた。
これでいい。
『先輩、こっちで点滴やってもらってもいいですか?』
必死に笑いを堪え、肩を震わせる和磨くんに奥のベッドルームに案内され、桜庭さんをベッドに下ろすと、点滴の準備をした。
「親指を中に入れて、ぎゅっと握ってください。」
腕に駆血帯を巻き、血管を探した。
うわっ、血管細っ!
こりゃ看護師泣かせの血管だ!!!
消毒を施して、
「チクッとしますよ。」
看護師になって何度も繰り返してきたことだけれど、慣れることはない。
慣れが緊張感を失くし、医療ミスに繋がるのだから。

