突然、勇輝の深く絡めた指が私の手からスルリと離れた。
『響、お前…』
拳を強く握りしめた勇輝は強い視線を私の背後に向ける
その視線の先には…
『やっと会えたね、ゆうき…』
天使のような優しい笑みを浮かべた『響』と呼ばれたピアニストが、ゆっくりとこちらに近づいて来る。
勇輝の周りの空気が、全てを拒絶するかのように張りつめたものに変わっていくのがわかる。
今ここでトラブルになったらふたりだけの問題では済まされなくなってしまう。
透オーナーも勇輝の異変に気づいたのか、席から立ち上がった。
何とかしなきゃ…
そう思ったら、庇うように勇輝の前に立っていた。

