「そういうわけだから。ネックレス、しとけよ?」

腰を上げ、朝葉の頭をぽんっと軽く叩くと和飛はドアへと向かっていった。

「あ、そうそう……」

ドアノブに手をかけたまま朝葉のほうに体を向け、和飛は笑顔で言った。

「俺、避けられても、嫌われても絶対朝葉のこと諦めたりなんかしねぇから」

これだけ臭い台詞を言い放った男は和飛が最初で最後だろう。

ドアの向こうに行ってしまった和飛の足音だけが聞こえる。

音楽室にただ1人取り残され、朝葉はイスの上で膝を抱え込んだ。

どうして?

どうして和飛はそんなにも自信があるの?

諦めてくれれば全て終わるのに……。

目の前がだんだんとぼやけていく。

「行けない…よ…。行っちゃダメなんだよぉ……」

拭っても拭っても溢れてくる涙をどうすることもできない。

和飛の自信がよけいに朝葉の心を揺さぶってくる。

「あたしは……ッ!!」

和飛が好き。

もっと一緒にいたいよ……。

朝葉はこのとき初めて自分の気持ちに素直になったんだ。