楽園の姫君



ところがある朝、水晶を覗くと、あの花のような少女が泣いていた。

いつも笑顔があったそのかんばせに、今は涙が浮かんでいる。

ラナシュは自覚しないうちに千年ぶりに悲しみを覚えていた。


けれどその時はまだ涙の意味を知らなかった。
どうにかしたい、そう思ったのは確かなのに、何をすれば良いのか、解らなかった。


何も……




できなかった。