「おい、大丈夫か?」 ハッと顔をあげてケンさんをみると、いつもの彼だった。 「はい。ズミさんはどんな洋服が似合うかなって考えてました」 とっさにでた嘘に、ケンさんは訝しい表情を見せたが、 「あいつはなんだっていいんだよ」と笑ってみせた。 最近のケンさんは会った頃よりもよく笑う。 笑うっていっても一瞬、ほんの少し唇の左端がキュッとあがるだけ。 前にトミさんにそのことを言ったら、「そういえば表情が豊かになったかもね」と言っていた。 あれで表情豊かといえるかわからないけど、そうらしい。