俺は考える。

生徒の群れが在るという事は、授業を始めたい先生が生徒を教室へ戻そうとする。

楓も教室には行かずに来るはず。

流れでHRは遅れ、助かって死なずに済む。

教室にダッシュ!しようとしたが、足は別方向に走っている。

群れへと突っ込んでいるぞ。

何か気になるしな。

好奇心旺盛な自分には困ったものだ。

近くで見るためにざわめく群れの中に入る。

群れの真ん中では、傷だらけの男が二人立っていた。

よく見ると、一人だけが傷だらけって感じだ。

一人は余裕な感じで、笑っているように見える。

何がなんだかわからなかったので横の子に聞いてみる。

「すまんが、どうなってんだ?」

「なんかね、肩にぶつかったとかどうとかで喧嘩にって、鷹威君!」

声には聞き覚えがあった。

それもそのはず、横にはポニーテール少女の佳那美がいるのだ。

「佳那美も見てたのか」

「気になって」

「浅はかな理由だな」

「別にいいじゃない!気になったの!」

自棄ないい方だ。

「俺もそんな感じだ」

「なーんだ、鷹威君もそんな理由なんじゃん」

「それより、誰か止めないのか?やられてる奴、結構ピンチだろ?」

このままいけば、死ぬかもしれない。

「止めに入れたなら入ってるよ」

「どういうことだ?」

「笑ってる人ね、かなり強い人なんだ。名前は海江田広隆だったかな。皐月鳴の四天王って言われてるみたい」

「強いからって一方的にしばいていい理由にならない。誰かが止めなきゃ殴られたままになっちまう」

足は前へと出ている。

「やめなよ、鷹威君があんな風になっちゃうよ!」

佳那美の制止を聞かずに、身体が二人へと近づいていく。

「構わねえ!男として、助けなかったっていう悔いは残したくねえ!」

何だかわからないが怒っていた。

感情が高ぶりすぎたのだろう。

俺は二人が気付く距離まで出ていた。