「夫はすでこの世におらん。じゃから、この人形はここに回ってきた」

「一緒に埋葬しろよ」

「夫が言うには、人形を他の誰かに渡して、不幸な人を救ってくれとの事じゃ」

何か怖いな。

祝福だとは言うが、要は人の念が篭っているってことだろ?

それは、呪いに等しいものではないのか?

「よし、刹那、別の物にしよう」

「ウチも幸せになりたい!」

「はあ?」

この馬鹿は何を言ってるんだ?

「恭耶!この人形が欲しい!」

「おいおい、妙な話があるなんて、本当は不吉な代物なんだぞ」

「嫌や!これを買ってくれな、ボク、暴れるんやからな」

何て迷惑な奴。

本当に高校生なのかと思うぞ。

「少女の願い、聞き入れてはくれぬか?」

「じいさんが持ってろよ。幸せになれるんだろ?」

「ワシはもう幸せになっている」

商売にしているところから怪しすぎるな。

「刹那も十分、幸せだろ?」

「誰かのせいで、最悪な日が続いてるわ」

結構、お前も原因だと思うんだがな。

ちょっとした事で、怒らなければいやな目にあわなくても済むのにな。

だが、買わないと余計な駄々を捏ねられるのがオチだろうな。

正直、呪いにビビっていては話にならない。

深くこだわる必要もないか。

「解ったよ」

「もう、恭耶も素直な奴やないな。最初からええって言っときや」

刹那の言動には呆れ返るばかりだ。

「ま、お前にはお似合いだな」

「それくらい可愛いってことやろ?」

「いや、幼稚臭いってこと」

発頸を腹に打たれて、店の外まで吹っ飛んでいく。