「ち」
腕を振りほどきうろたえながら、男は去っていった。
「兄様、ここで」
萌黄は一礼すると分かれ道で自分の中学校へと方角へ歩いていった。
光蔵も一人皐月鳴高校へと歩いていく。
光蔵の家からさほど時間がかからない。
学校へ着いたのは授業が始まる三十分も前だった。
他の生徒の姿は多いとはいえない。
光蔵が早く学校へ着たからといって何かをするわけではない。
誰かに会いに来ているわけでもないし、花壇に水をやりにきているわけでもない。
ただ、一年の時からの日課として、続けられてきた事だった。
三階の教室に入ると、一人の女生徒が教室で日直の仕事をしていた。
「乾君、おはよう」
光蔵が来ることが分かっていたかのようなタイミングだった。
「おはよう」
「いつも早いね」
三つ編みの女生徒は微笑む。
「ああ」
これといって気にするそぶりを見せない。
まるで、視界に入っていないかのような素っ気無さだ。
光蔵は鞄を置いて、腕を組んで席に座る。
「乾君は買出しと組み立ての役割だったよね」
光蔵のクラスの出し物は、焼きそばの屋台であった。
「ああ」
「手伝おうか?」
「お前にも役割はあるだろう、そっちに集中しろ」
窓の外の登校する生徒を眺める。
腕を振りほどきうろたえながら、男は去っていった。
「兄様、ここで」
萌黄は一礼すると分かれ道で自分の中学校へと方角へ歩いていった。
光蔵も一人皐月鳴高校へと歩いていく。
光蔵の家からさほど時間がかからない。
学校へ着いたのは授業が始まる三十分も前だった。
他の生徒の姿は多いとはいえない。
光蔵が早く学校へ着たからといって何かをするわけではない。
誰かに会いに来ているわけでもないし、花壇に水をやりにきているわけでもない。
ただ、一年の時からの日課として、続けられてきた事だった。
三階の教室に入ると、一人の女生徒が教室で日直の仕事をしていた。
「乾君、おはよう」
光蔵が来ることが分かっていたかのようなタイミングだった。
「おはよう」
「いつも早いね」
三つ編みの女生徒は微笑む。
「ああ」
これといって気にするそぶりを見せない。
まるで、視界に入っていないかのような素っ気無さだ。
光蔵は鞄を置いて、腕を組んで席に座る。
「乾君は買出しと組み立ての役割だったよね」
光蔵のクラスの出し物は、焼きそばの屋台であった。
「ああ」
「手伝おうか?」
「お前にも役割はあるだろう、そっちに集中しろ」
窓の外の登校する生徒を眺める。

