まあ、仕方ないか、ここは工学部だ。たぶん、工学部なんてのはどこも掃いて捨てる程の男の数なのだろ。なんたってあれだ、うちの大学は特に“おとこう”学部なんていう愛称を持っているらしいしな。

 そういえばこの土日は特に予定無いよな、何して過ごそう、ビラ配っていたテニサー――テニスサークルの略だ――の花見にでも参加しようか、なんて考えていたら、かったるいホームルームも終わった。

 おれは赤外線通信とかいう現代文明の賜物を用いて、てっぺいとタカと連絡先を交換した。ちょっとの操作で相手に電話番号とメールアドレスを伝えられるなんて、便利な世の中になったもんだ。

 思えば、初めて赤外線機能というものを使ったなんていったら、「何時代の人間だよ」と二人に大笑いされた。うるせえな、これでも平成生まれの人間だよ。

 そのまま三人でまた雑談をしながら講義室を出て歩いていると、すいませんという可愛らしい声とともに、背中をちょんちょんつつかれた。
 振り返ると、そこにはミリちゃんがいた。小さな右手には携帯電話が握られている。

「あ、あの……先程はありがとうございました! これからよろしくお願いします……そ、それで、その……ご迷惑でなければ連絡先を教えていただけませんか?」

 確かに、世界は廻り始めたのかもしれない――。