それぞれの自己紹介をした後で、ホテルのレストランでランチを頂くことになった。


勿論予約はしてあって、イタリアンのコースを皆で頂く。


その間、話していたのはもっぱら、あたしと奈津美さんだった。


奈津美さんはその外見の若々しさの通り、なぜか若者の流行に酷く関心を持って、そしてよく知っていた。


理由を聞いてみると、彼女はなんと一介のファッションデザイナーだったのだ。


10~20代を中心にして仕事をしているというから、そちらの方面に詳しくて関心が強いのは当たり前だ。


それがどうして、一介のサラリーマンであるお父さんと知り合ったのかはちょっと謎なのだけれど。


そのお父さんは、あたしと奈津美さんの会話をただ聞いて、なんだか満足そうに頷いていた。あわせてよかった、なんて考えているんだろう。他に、これならあたしが反対することなく、スムーズに再婚ができると計算していたのかもしれない。


けれど、そんな中でただ一人、智也君は違った。


あたしたちの間に少しだけ暖かな空気が流れている中で、智也君はただ一人、冷たい北風のような空気を纏って、黙々とランチを食べていた。


お父さんや奈津美さんが話を振っても、「うん」「まあね」「ううん」くらいしか返事をしない。


奈津美さんはそんな様子に不満だったみたいだったけれど、あたしは、それも仕方ないかな、なんて考えていた。


智也君のその様子が、あたしと一緒だと思ったからだ。