結局その後は煙にまかれるように相変わらずの理不尽な悪態を散々聞きながら読書をする羽目になった俺は夜明けも近付いた頃に明星図書館を出た。
「こんな時間に帰宅ですか?なんだか意外だなぁ」
家の近所まで来た時、降って来た頓狂な声に目線を上げれば左側にある民家のブロック塀の上に猫のようにこちらを見下ろす童子の面を付けた芹緒と眼が合った。
近頃は面を付けていてもこちらに目線を寄越しているかどうかくらいはわかるようになった。
「ちょっと知り合いの変人がやってる図書館にな。なんだお前、夜までこの辺うろちょろしてんのか」
「まさかぁ、もうすぐ夜明けですから紺のご実家に向かってたんですよ」
「俺ん家?」
「…僕と関わるようになった以上、良かれ悪しかれ妖怪関連で今までの紺の日常とは確実に違う変化が紺に降りかかる事は逃れられないでしょうから、四六時中とまでは行きませんが出来る範囲邪魔にならない場所から様子を見させていただいてるんです。気分の良い事ではないとは思うんですが、こればっかりはどうにも」
身軽な動きで路上に降り、俺の前に出ながらそう申し訳なさそうに声音を弱める顔は少し俯いている。
付けている面が面なのもあってなんだか叱られてしょげる小さい子供のようだ。
口に出さないが俺に謝罪の念を持っているのは何となくわかる。
黙ってた事に対してと、それでもやめるつもりがない事に対してのものだろう。
「あぁ、力任せの自己防衛じゃあの手は通用しねぇんだからしょうがねぇよな。言霊の力がもっと強くなったらちったぁマシになんのか」
「え…まぁ…言葉の通じる範囲までであれば相手の動きを操作する事も出来ますが、余程強くないと…」
ならそこまで扱えるようになる必要がある。
こいつは自分を削る事に慣れ過ぎてる。
そんなものに甘んじていて良いわけがない。
「わかった。わりぃな、それまで頼むわ」
「そんな、僕は全然…それより…」
「しなくていい所でまで自分で負担しようとするな」
「こんな時間に帰宅ですか?なんだか意外だなぁ」
家の近所まで来た時、降って来た頓狂な声に目線を上げれば左側にある民家のブロック塀の上に猫のようにこちらを見下ろす童子の面を付けた芹緒と眼が合った。
近頃は面を付けていてもこちらに目線を寄越しているかどうかくらいはわかるようになった。
「ちょっと知り合いの変人がやってる図書館にな。なんだお前、夜までこの辺うろちょろしてんのか」
「まさかぁ、もうすぐ夜明けですから紺のご実家に向かってたんですよ」
「俺ん家?」
「…僕と関わるようになった以上、良かれ悪しかれ妖怪関連で今までの紺の日常とは確実に違う変化が紺に降りかかる事は逃れられないでしょうから、四六時中とまでは行きませんが出来る範囲邪魔にならない場所から様子を見させていただいてるんです。気分の良い事ではないとは思うんですが、こればっかりはどうにも」
身軽な動きで路上に降り、俺の前に出ながらそう申し訳なさそうに声音を弱める顔は少し俯いている。
付けている面が面なのもあってなんだか叱られてしょげる小さい子供のようだ。
口に出さないが俺に謝罪の念を持っているのは何となくわかる。
黙ってた事に対してと、それでもやめるつもりがない事に対してのものだろう。
「あぁ、力任せの自己防衛じゃあの手は通用しねぇんだからしょうがねぇよな。言霊の力がもっと強くなったらちったぁマシになんのか」
「え…まぁ…言葉の通じる範囲までであれば相手の動きを操作する事も出来ますが、余程強くないと…」
ならそこまで扱えるようになる必要がある。
こいつは自分を削る事に慣れ過ぎてる。
そんなものに甘んじていて良いわけがない。
「わかった。わりぃな、それまで頼むわ」
「そんな、僕は全然…それより…」
「しなくていい所でまで自分で負担しようとするな」


