燕と石と、山の鳥

「おうおうおう、この糞ガキめ。
随分けったいなダチ公と付き合ってるみたいじゃァねぇか。おう?この野郎」

「毎度毎度ここ以外じゃ全く見かけねぇのにどっから情報入れてんだよ」

「てめぇの目ン玉ァ木製なんじゃねぇか?それにどうして外でまでてめぇの視界に入らなきゃならねぇよ」


いくつ目かの角を曲がる。
そしてまた曲がろうとして、やめて真っ直ぐ進んだ。


「けったいだっつーんならあんただって人の事言えたもんじゃねぇだろ」

「うーるっせぇんだよあー言えばこー言いやがって」

「あんたあー言ったってこー言ったって黙って聞いてたって不満なんじゃねーか」


そう言って目前の本棚の奥へ回り込むと、目的地に着いた。

雑然とした本棚を押しのけるようにして出来た空間。
その中心に、ランプの置かれた書斎や校長室なんかに置かれているような厳つい机と、キャスターのついた黒い革張りの椅子があった。

そしてその椅子には見た目には奇っ怪な老人が片足をもう片方に乗っけてその膝より頬杖をついて座っている。
白髪の短髪に、しかめ面のせいで顔面に埋まるようにしてついている左右で大小のやたら違う真っ黒な色付き眼鏡。
しわだらけの顔にある口は不機嫌そうに歪み、黄ばんだ歯が見えていた。



「…ったく、いつ来たってェムカつくガキだな。糞面白くもねぇ」




この図書館の館長、金星 一(キンボシ ヒトツ)は、相変わらずの偏屈さでそう言った。