ちゃんと図書館を開館することは少なく、開ける時は必ず明星が空にある時に開き、そして必ず次に明星が出た時に閉館する。
宵の明星から開けたなら明けの明星まで。
明けの明星に開けたなら、その日の宵に、明星を認め閉館する。
名前の通りの、奇っ怪な図書館なのだ。
久しぶりに訪れたその洋館の窓には明かりが漏れ、琥珀色の手作り硝子の嵌る入り口の扉の上にはカボチャに似た形の古いランプが火を灯しぶら下がっている。
緑青がかった重いノブを押して中に入ると、冷たい濃いインクの匂いがツ、と鼻をついた。
「なァんでぇ玉藻の前んとこのガキじゃあねェか。
化かし方でも覚えて来やがったのかァ?」
入り口からは見えるはずもない入り組んだ本棚の奥から啖呵を切るような威勢の良いしゃがれ声が響いて来る。
「相変わらずボケてんじゃねぇよ」
「馬鹿野郎この糞ガキてめぇこちとら今も昔もわけぇまんまで現役だっつってんだァろうがこのアンポンタン」
呆れて返すと即答で返してくる毒舌に年齢不詳の老いぼれがまだちゃんと生きてる事に俺は苦笑しながら中を進むことにした。
ある程度勝手知ったるとは言ってもこの図書館の主人はしょっちゅう模様替えと称し本棚の配置を変える。
目的の場所に行き着くのはすんなりとはいかない。
迷ったら戻れば良い。
大して力む事なく歩き出した俺に、見えてないはずの奴は逐一話し掛けて来た。
宵の明星から開けたなら明けの明星まで。
明けの明星に開けたなら、その日の宵に、明星を認め閉館する。
名前の通りの、奇っ怪な図書館なのだ。
久しぶりに訪れたその洋館の窓には明かりが漏れ、琥珀色の手作り硝子の嵌る入り口の扉の上にはカボチャに似た形の古いランプが火を灯しぶら下がっている。
緑青がかった重いノブを押して中に入ると、冷たい濃いインクの匂いがツ、と鼻をついた。
「なァんでぇ玉藻の前んとこのガキじゃあねェか。
化かし方でも覚えて来やがったのかァ?」
入り口からは見えるはずもない入り組んだ本棚の奥から啖呵を切るような威勢の良いしゃがれ声が響いて来る。
「相変わらずボケてんじゃねぇよ」
「馬鹿野郎この糞ガキてめぇこちとら今も昔もわけぇまんまで現役だっつってんだァろうがこのアンポンタン」
呆れて返すと即答で返してくる毒舌に年齢不詳の老いぼれがまだちゃんと生きてる事に俺は苦笑しながら中を進むことにした。
ある程度勝手知ったるとは言ってもこの図書館の主人はしょっちゅう模様替えと称し本棚の配置を変える。
目的の場所に行き着くのはすんなりとはいかない。
迷ったら戻れば良い。
大して力む事なく歩き出した俺に、見えてないはずの奴は逐一話し掛けて来た。


