燕と石と、山の鳥

今まで体感していたこのあまりにも変わらない空気が、瞬時に不気味なものに変容した。

芹緒も緊張感を募らせる。



「お茶は、いかがでございますか?」


飲めるか。


「どうして…」

芹緒が小さな声で呟く。
俺も同感だった。
関連性が見えない。と言うか、そんな危険性をこの枯れた老人の何処にも感じない。

いたって真面目に修行を積んで来た、無害な僧侶の姿は人殺しとは無縁に見える。

あまりにもあっさりと白状し、そこに後ろめたい様子もそこまでの衝動を掻き立てた強い感情があるようにも見えない。
殺人犯だとわかった今も、目の前の人物は勤勉そうで無害そうな穏やかな坊主のままなのだ。

それが逆に異質だった。



「なに、悟りを与えただけのこと。たいした事ではございません」


その口調は先程と変わらない。

ただ、落ち窪んだ眼窩は更に窪んで見え、薄い唇の下には並ぶ歯や歯茎の凹凸が見て取れる。



まるで皮を透かして骨が見えているようだった。