燕と石と、山の鳥

芹緒と関わるようになって知ったが、妖怪ってのは思ってた程犬や猫のように不変的な存在ではないらしい。


と、隅の襖がすーっと開いて、「お待たせいたしました」と低頭する和尚が入って来た。


「粗茶でございますが…」

「いえいえお構いなくご院主。
いきなり本題で申し訳ありません。
ご院主は、今回の事件の方はご存知なんですよね?」

「えぇ、えぇ」

「発見された遺体の方の生前に面識は…?」

「はい、ございます」


お茶はいかがですか?と、出したばかりの茶を勧めた。
芹緒ははいとだけ答え、俺は軽く会釈をして湯呑みを持つだけ持った。


疑問がわく。

何故、白骨死体として発見された身許不明の遺体が誰なのか知ってるのか。

それは偏に事件に関わったか、現場を目撃したか、いずれにせよ被害者が生きている状態から肉を失っていく過程を見ていた事になる。


それにしては、目の前の老人には動揺や焦りのような色は見て取れない。

あまりにも、自然だ。



顔面の皮だけで笑う老人は、芹緒から俺に視線をずらすと、また茶を勧めてきた。


「…和尚」

「はいはい、なんでございましょう?」

「あの事件の犯人、あんただな?」

「ちょっ紺…!」
















「えぇえぇ、ご明察でございます」