燕と石と、山の鳥

声を上擦らせて過剰に反応した芹緒を訝しんで奴を見るが、小面越しだから表情どころか顔色すらわからない。


「なっななな何言ってるんですか紺!
なななんで今僕の顔の話になるんですか!?」


声色は愉快な程動揺してるな。
つか、あんなに誰もが頷くような顔を過剰に見せたがらないのはトラウマでもあんのか?
どんなんかは知らんが、気にしなくても良いんじゃないかとは思うんだけどな。


「いや綺麗な顔っつったからさ。
ならそっちだろって」

「うわぁにに二回も言わないで下さいっ!
さぁっ急ぎましょう!!
さぁさぁ!」



黒髪から覗く耳が真っ赤になる程必死に全力で話を逸らして道を一応先導する形だった俺を追い越して競歩選手の勢いで先を急ぎ始める。

あー…


「そこ左だぞ」

「了解です!」


おい右曲がんな。

なんだあいつ……ったく。

一回落ち着かせる必要があると見た俺は、とりあえずは芹緒を止めるために小走りでカーブミラーの下を右折した。