燕と石と、山の鳥

まぁ、それはまた置いておこう。



考えて見れば、芹緒がしている仕事の対象は言ってしまえば”目に付いた対象全て”なのだから、なにも俺の住んでる界隈に限ったことじゃないはずだ。

芹緒から言ってみてもこの短期間にこの狭い範囲内で三件立て続けで仕事をするのは珍しいんだそうだ。


実家は、確か京都って言ったかな。

元々平安時代からのしきたりに関係した家系だもんな。

…ん?学校行ってねぇってのは何処からだ?
義務教育の方は大丈夫なのか?あいつ……



「先輩、なんだか娘を案じるお父さんみたいな顔をしてるですよ?」


気が付くと、目下に倉敷が俺を見上げてるのを発見。

「どしたですか?
キョロキョロして」


カツアゲ現場だと勘違いされかねぇ。
我ながらこんな習慣がついてしまったのが悲しい限りなのだが。
幸い俺達がいる資料室前付近に人影は見当たらなかった。


「何してんだ?こんなとこで」

「本を読みに来たです。
此処のは懐かしいのがたくさんあるです」


古い文献の事だろう。
あぁいうのって関係ないはずなのに無条件に懐かしい気分になったりするもんな。


「先輩、大変だったみたいです」

「あー…」


坂田父の事故か。
倉敷もあそこにいたのか。

「まぁ俺はいつも大変だ。
今もう帰りか?」

「そんなところです」

「そか、寄り道すんなよ」



雑だが頭を撫でると倉敷は「あーい」と返事をした。

うむ、元気でよろしい。