「はぁー…」



今だ蝉の声聞こえる昼下がり。
学校の屋上。

俺はため息をついた。
そらもう、盛大に。



「随分物憂いため息ですねぇ紺」

「ばかやろ普通のリアクションだよ」


大きな鼻、横にかっ開かれた口から覗く牙のある金の歯、大仰にデフォルメされた顔に埋まる真ん丸い目玉。
飛出(トビデ)の面を付けた芹緒は屋上の扉がついた場所の上に設置される貯水タンクの上に座ったまま言葉を投げ掛ける。


「国内のくくりで言えば人死になんて毎日のように起きてますって」

「んなこたわかってる。
それにしたって今度は…」


俺は昼休みの始めに芹緒に渡された新聞に目を戻す。
視線の先は紙面左上の見出し。


『美鷺(ミサギ)町に白骨死体』




「隣町じゃねーか…」



事故や病死ならともかく、最近近辺での殺人事件がほとんど立て続けに2件。
狗神の宿主にされた男、倉井の起こした女子学生連続殺人事件から一ヶ月もたっていない。


再度、俺はため息をついた。