それから三日程して、例の兄弟はなんとうちを訪れた。

いつも通り俺が芹緒と一緒に帰って来ると、店の前の電信柱に二人はいた。




「あれ?彼等はこの前の…」
「あ?」


芹緒の言葉に俺が声をあげると、そこにいた二人はビクリとしながら俺達の前に出て来た。


「あ、あの…この前は、ごめんなさい!!」


二人揃って勢いよく頭を下げる。
何故か芹緒の奴まで俺の反応見てるし。


「謝んのは俺じゃねぇだろ」


思ったより低く出た俺の声に二人がビクッと肩を震わせる。
そらそろと顔を上げる。


「どんな人でも、本当は親父サン好きだったんだろ?」


事情がわかってる俺からの言葉だったからだろう、二人はキョトンとしたあと、その目に涙を浮かべて力強く頷いた。


「真っ当に生きろ。親父サンに顔見せ出来るくらいに」

「父さん…よく笑う人だったんです」


泣き始めた弟っぽい方がそう俺に言う。


「じゃあ泣くな」

がし!と頭を掴むと掴まれた張本人は「ひっ」と悲鳴をあげ兄は「冬真!?」と悲壮な声をあげ、芹緒は「紺!はやまっちゃ駄目ですよ!!」って芹緒てめぇこの野郎!!

気を取り直して、続ける。


「親父に負けねぇくれぇ笑って生きろ」


しばらく俺の顔を見ていた二人だったが、すぐに歯を見せるようにニカッと笑顔を見せた。

それを見て、俺も思わず笑う。


「うしっ!!飯食わせてやるから寄ってけ!」




喜ぶ姿に芹緒が加わってやがったが、まぁ許してやるか。










<火車編、了>