見知らぬ二人組が去った後、仏前は騒然としていた。


わざわざ集まってくれた近所の人達は口々に出て行った人相の悪い高校生の悪口を言っている。

兄弟は、お互い目を合わせずに手を取り合ったまま俯いていた。


「…なぁ、冬真」


呟きに近い兄、颯士の言葉に、冬真は反応を見せる。


「父さん、いつも色んな所にお金借りて、バイトして……へとへとになっても、いつも笑いながらでかい声で、"ただいま"って、言ってたよな…」


次第に、握られた手の力は強くなり、声は震え、その声に、ただ弟は唇を噛む。


「なんであんな事言ったんだろう……」


"死ねば良いのに"なんて、


「あんなに……父さんは優しかったのに…」




そこまで言うと、兄は鳴咽を隠せず泣き始め、弟もつられたように我慢していた涙を溢れさせた。

訃報を知ってから初めて、大声を上げて泣き出した兄弟に大人達は驚きながらも心配そうに肩を抱いたが、その真意を知る人は一人としていなかった。


僧侶は、ただ朗々と経文を唱えているだけだった。