燕と石と、山の鳥

俺が目の前に立つと、二人はびくりとしながらも手を取り合って身を寄せ合いながら上目遣いがちに俺を睨んできた。

こっちが高ぶってたんじゃ、伝わるわけもないことがありありとわかる、拒絶的な心が見て取れる。

静かに息を吸って、吐く。

もう一度、正面から二人の眼と向き合い、慎重に言葉を紡いだ。




「俺は、そこのオッサンの死に目に立ち会っただけで、生前のオッサンがどんなんだったかなんて知らねぇ。それはここにいる人らやてめぇらの方がよっぽど知ってんだろう」

少し、険が揺らぐ。


「結局、極端に辛ぇ時だって極端に幸せな時だって決まって何かが見えてねぇんだよ。
思い出してみろ。
お前らの見えてねぇもんがいかに大事なもんかって事を」


誰かが一緒にいるから、辛い時和らぎ、嬉しい時喜べるはずなんだ。
家族ならと、お互いを許し合えたはずなんだ。


「お前達の扱った言葉がどれだけ親父サンを傷付けてたのか考えろ。
それでも自分のガキを愛しちまうのが親なんだよ」




しばらくの沈黙。






「ちょっと!あんた一体なんなんだ!!」
「そうだよ!この子達を責めようってのかい!?」

口々に激昂する周囲に背を向けると俺は仏前に焼香をあげ二人の反応を見届けずに部屋を出た。