燕と石と、山の鳥

「ただい、まー」

「おう」

「お邪魔しまーす」

「…?」


店舗から奥の居住スペースに行く時、新聞に目を向けてた親父が芹緒が通り過ぎたあとに数秒遅れてからこっちに視線を寄越した気配がしたが、まぁ特に気にせず奥へ。


「ただいまー」

「はいはいお帰りなさーい」
「お邪魔しまーす」

「はいはい何にもない所ですけどー…あらぁ?あらあら!ちょっと紺ーっ?」


社交辞令が条件反射になってるお袋が返事の相手が理人じゃないことに気付いている間に居間を通る。


「お兄おかえりー」

「おーお前部活は?」

「今日は休みー」

「お邪魔します」

「ん?え!お兄理人君以外に友達出来たの!?」


ソファに座ってテレビを見ていた梨里子が芹緒の声を聞いて凄い勢いでこっちを振り向いた。
さすが若いだけあって反応速度が違うな。

「あらあらお赤飯炊く?」


台所から出てきたお袋が嬉しそうに言う。
芹緒は俺から顔を背けて激しく肩を揺らしていた。
笑ってる。

自己紹介しあってる三人のやりとりを一通り黙認してから梨里子とお袋の好奇の目をほっといて自室に上がった。


「いやぁ、素敵なご家族で」

「激しく忍び笑いしてた奴が何をぬけぬけと」