燕と石と、山の鳥

なんか小さいころの梨里子を見ているようで、自然と頬が緩んだ。

そういえばあいつ、もうすぐ誕生日か…。


「ん?紺、買わないんですか?」

ふと芹緒がやっと気が付いたようにこっちを振り向く。


「あ?お前こそ。腹鳴らしてたのはお前だろ」

「恐縮ですが、僕は良いです。あまり持ち合わせがないので」


そういってさも当然のようにまたパン観察に戻る芹緒。
なんか…哀れっぽい。

俺はパンをとるためのセットを入口横で調達すると芹緒が特に興味を引かれていた(ように見えた)メロンパン、アップルパイ、チョココロネ、クロワッサンと手早くプラスチック製の盆に乗せてってレジに突き出した。

俺の一連の動きを恐々観察していた店員は盆を突き出されてあろうことか「ひっ!」と短い悲鳴をあげたが、すぐ営業モードを取り戻し会計を済ませた。


「ほらよ」

「はえ?」


やけに必死な「ありがとうございました」を背中に放られながら店を出ると、パンの入ったビニール袋をそのまま芹緒に放る。
芹緒の方はと言えば、一応受け取りはしたものの、状況はまったく飲み込めていない雰囲気だ。


「やる」


俺の言葉に芹緒はしばらく俺の顔とパンの入ったビニールを指す俺の指を交互に見ていたが、やがて弾けるようにあわあわ言い出した。