燕と石と、山の鳥

「あっれー?浅水じゃない!また補導されたのー?」



喫茶店のあった路地を出ると、そんな屈辱的な言葉をかけられた。
家族以外でこんな事を言う奴一人しかいない。


「そんで出て早々カツアゲ?」

「おい」

「アハハわかってるってウソウソ。じょーだん」

「おい理人」

「どうもはじめましてー俺浅水の幼なじみの白草 理人。それノーメンってのだよね?ファッション?」

無視だ。

「はじめまして、僕は泰納 芹緒と申します。つい最近ひょんなことから彼とは友人になりまして」


芹緒がそのちっさい頭をひょこんと下げると理人は和風キャラーとかなんとか言ってけらけらしている。
こいつが笑うと嫌味に感じないから不思議だ。
殆ど素で言ってるからであろう辺りがまた気に入らないんだが。

そして軽薄にして野次馬な幼なじみはそうでなくても気にかかる俺と芹緒の関係を聞きたがる。


その前に、

「なんでお前こんなとこにいるんだよ」

「えー?だって俺ん家この辺じゃん!浅水もう頭やられちゃったの?そしたら俺どうやって生きて行ったら良いんだよぉっ」

知るか。


「そうじゃねぇ。お前この時間帯は大概合コンかゲーセンだろ。帰宅には早ぇんじゃねぇのか」


言われた理人はやだ浅水なんで知ってんのー?俺ストーカーじゃあんなどという気色悪い事を言ってはくねくねと動く。
重ね重ね気色が悪い。