「そう言えば、つい最近まで騒がれてた連続殺人。
ここの所聞きませんが犯人は見つかったんですか?」
今まで話を聞いているだけだった芹緒がいきなり口を開く。
つか、お前犯人斬っただろ。
「あーあれなぁ…
自分が犯人だっつって署に名乗り出てきた奴がいるんだけどなぁ。
素直に吐くし証言も大した矛盾はないんだがいかんせん凶器がないって言いやがるもんだからそこが担当のやつらもひっかかっててなぁ」
まぁ自分が狗化して噛み殺したって言っても証言としては成立しないだろうな。
「でもこのところ誰も被害者がでていないってことはきっと本当にその人が犯人なんですね」
お前は何を抜け抜けと。
「多分そうなんだろーなぁ。
俺も会ってみたが嘘つく度胸なんてなさそうな奴だったし」
「お待たせしましたー」
バイトの変に高い間延びした声とともに各々の前に珈琲が置かれてく。
すぐに小さい瑠璃色のカップからは香ばしい独特の香りが立ちのぼってきた。
「ここの珈琲はうまいぞー
行き詰った時にふらっと立ち寄るんだがここでこうして珈琲を飲むと不思議と決まって解決策が浮かぶんだよ」
「へぇ…」
紅茶よりは珈琲派な圦サンの事だから珈琲にはちょっとうるさいんだろう。
嬉しそうに珈琲をすする圦サンを眺めていると、視界の端で芹緒が口も付けずにカップを凝視しているのに気が付いた。
…確かに所々浮世離れはしているが、珈琲を飲んだことないなんてことは、ないよな?
「おい…」
ピリリリリリリリリリリリッ!!
「おっと悪いな。
もう行かにゃならん」
携帯を取り上げながら席を立つと、圦サンは「お前らはのんびりしてくといい」と言い残して俺達の分の料金もテーブルに置いて一足先に店を出て行った。


