燕と石と、山の鳥

「もー!こーゆー事になりそうだったからそれとなく言って回ってたのに!」






一応それなりに気を回していたらしい梨里子が苛々と文句を大きめの独り言のように言う。

なんだかその雰囲気が、いつもよりカリカリしてるような気が、なんとなくした。



「なんだ。なんか嫌な事でもあったのか?」

「え?
…あー、なんか、ここのところ変な奴が昼間学校の外うろついてるみたいで…」

「変な奴?」


眉をしかめた俺に少し不安そうな色をちらつかせ頷く。



「この前、買い物行ったでしょ?
その時に生徒手帳拾ってあげた人がいたんだけど、なんかその人みたいで…」



学校の外からじっと梨里子の事を見ているらしく、俺が来る放課後には消えているとのことで、少なからず気味が悪いんだそうだ。

確かに、それはなんか不安にもなるだろうな。



「…まっ、帰る時はお兄がいるから全っ然問題ないんだけどねっ?」



気丈に振る舞って笑う梨里子に「バーカ」と言いながらその頭をぐしゃっと撫でる。

梨里子はその手を払わずに「へへ…」と少し安堵したように笑った。